ジャコが MI で語った、いくつかの興味深い話

ジャコ・パストリアスが MI(アメリカの音楽学校)で行ったセミナーの動画が YouTube にありました。 その中でジャコ本人が語っていた内容を一部紹介します。
びっくりするような内容や参考になる内容が盛りだくさんです。


●右手のタッチ(弾く強さ)について
「いつもハードタッチで演奏している。フレットレスでも、とても強く弾いている。グラウル(うなる感じ)を得るために。ハードにピッキングするけど弦を切ったことはない。ベースを投げたりしていろいろ壊したりはするけど。」

●弦高について
「そんなに低くない。すごく高くはないけど、良いトーンを得るための十分な高さはある。ほんとに中ぐらい、というか、平均的な高さ。すごく低くはない。とてもハードに弾くからあんまり低くすると演奏できない。バズが鳴る(弦がビビる)から。」

●曲中のソロについて
「フォーム(コード進行など)とメロディー、ダイナミクスのことを考える。主にメロディーに集中するようにしている。演奏している時は常に曲のメロディーを頭の中で鳴らしている。アウトサイドなことをしていても曲のメロディーのことを考えている。それが基本。メロディーがすべて。頭でメロディーを歌いながら演奏している。」

●ゆっくりと弾くことについて
「練習のときは速く弾かない。すべてゆっくりと弾く。どの音を使っているかなどすべての情報を頭に入れながら。大変だけど、そのほうが良い。」

●ピッキングについて
「ツーフィンガー(人差し指と中指)で弾く。親指と薬指、小指はミュートに使ってノイズを出さないようにしている。実はそれが音を演奏するよりも難しい」

●役に立った練習について
「主にチェロ用の教材。たくさん勉強した。チェロは5度でチューニングするからベースで弾くのはとても大変で、指板の下から上まで使う。それにとてもメロディック。そしてテクニックを磨くのにはとても良い。ベース用の教材はそれほどのものはなかった。シマンデルしかなかった。他にもバイオリン用の教材を手に入れたり、ピアノの演奏を聴いたりしていた。」

「主に本で勉強した。ドッツァウアーは覚えている。彼がメインだった。ドッツァウアーの113の練習曲。あれは素晴らしかった。バイオリン用のものも良い。バッハのものとか。インヴェンションとか。手の訓練に非常にいい。」

●楽器を持たずに行う練習について
「仕事をしているときはすごく練習する。それは実際に体で楽器を弾かなくても頭の中でバーチャルにできる。移動中とか車の中とか。寝る前とかにもベッドに寝転びながら頭で考えていると、実際に指でベースに触れて弾いているような感覚になる。何を言っているのか分からないかもしれないけど、実際そういう感じ。」

●その他
「自分は新しいこと、革新的なことをしたい。みんなが試すのを怖がるようなデンジャラスなこと。そういうことを自分はやる。」

「R&Bバンドがやりたいし、R&Bが一番好きな音楽だけど、みんなからはジャズプレイヤーだと思われている。自分はジャズが弾けるけど、ジャズプレイヤーだとは思っていない。自分は”ミュージシャン”だと思っている。仕事面では、ジャズプレイヤーだと思われるとロックやファンクのギグに呼ばれない。ジャズよりもロックンロールの演奏のほうが得意なのに、参加させてもらえない。一曲目にドナ・リーをやると思われる。」

「スタジオでは基本的に譜面に書いたものを用意している。新しいことをするときはあらかじめ譜面を見て準備するが、やり過ぎないようにしている。フレッシュでいるために。練習みたいなことはしない。」

「ソロアルバムのときは23歳で、緊張していたし、あらかじめすごく練習した。録音は1テイクだった。」

「ベースは独学。正式に独学した。」


また、この動画ではベースを弾いているシーンもいくつか見ることができます。何年も弾いていないと言いながらも観客のリクエストに答えて曲を一部演奏しています。

6分10秒〜 ポートレイト・オブ・トレイシーの演奏
9分20秒〜 ファンキー・ブロードウェイ風の演奏
20分15秒〜 ドライ・クリーナー・フロム・デ・モインの演奏
25分50秒〜 ドナ・リーの演奏
38分45秒〜 トリオでブルースのセッション (ギターはフランク・ギャンバレ)


<MI の動画>